カラス君と黒猫さん
よくそんなので転けないなと言う様な高いヒールで俺の近くに歩いてくる。
「あれ?黒猫、置いてあった猫耳は?」
「つける訳無い。ここはメイド喫茶じゃないし」
「クリスマスは許されるんだよ!つけねーと給料無いからな」
「はああ?!」
「決定ー。じゃあ俺ちょっと裏方見てくるからカラスをよろしくー」
「雅!」
バタン、と扉は閉められた。
黒猫さんは溜め息をついて、俺に向き合う。
「まっいいか。ねぇカラス君、髪弄らせてよ」
「・・・・・・・あ、いいけど・・・・」
「そんな見ないでよ。照れるー」
「照れてる顔じゃないよ、黒猫さん・・・・」
少し笑って、黒猫さんはスプレー缶を手に取った。
「オールバック!!いい?」
「ん、任せる。」
椅子に凭れた格好のまま、黒猫さんはスプレーを俺の頭にかける。
甘い香りが鼻をついた。
「・・・・・・はじめて見た、黒猫さんがキャバ嬢の格好してるの」
「そう言えばそうだねー。」
「似合うよ、それ」
「うん、ありがとう」
横髪を後ろへ流された所で、黒猫さんが俺の頬を掴んで向き合う。
あ、これだ。“照れてる顔”って。
黒猫さんの頬が赤くなってるのが分かった。