カラス君と黒猫さん
「ほらぁ。カラス君格好いいから奥様方も視線を奪われちゃってえ。この色男っ」
「煽ててもなにも出ないから」
人混みの間を通りながら、その莫大に広いカジノの中を歩いていく。
「ちょっと待ってな」
「あぁ」
カウンターの中へと消えていった雅を横目に、俺は人気の無い所へ立った。
凄いな、LAURA。
ドレスやタキシードで正装している人達が普通に居る。映画とかで見るシーンが今。
一般庶民の俺からしてみれば、何だか有り得ない。
(まぁ、新鮮で面白いや)
戻ってきた雅が俺を奥へ行くように促す。
そこに居たのは、大柄な中年の男性。
「こいつが、カラス。仲良くしてくれ、お二人」
「よろしく」
俺と同じ様な格好をして、何だか渋みが全く違う。
「篠加羅須王です。よろしく」
「俺はカラスって呼んでるー」
「おう、そうか。じゃあ俺もそう呼ぶとするかな」
「何でもいいですよ」
「俺はバーテンの高見。タカミ、でいい」
「仲良くしてねー。じゃあ頑張って、カラス。休憩になったら呼びにくるぜ」
「あぁ、分かった」
人混みの中に、色黒金髪坊主が消えていく。
何か、楽しくなってきた。