カラス君と黒猫さん
「・・・・・・・・大丈夫って、君、怪我だらけ」
「ちょっと転んだだけ」
その子の顔を見た。
目の少し上までに揃えられた前髪に、二つ並ぶ大きな目。
つり目っぽくて、睫毛が覗く。
に、白い頬にはぶつけたような傷跡と、反対側の頬には大きな絆創膏。
「ぶつかってごめん。じゃあ」
「あ、」
その子は大して気にした様子も見せず、俺を見上げて少し頭を下げ、去ろうとした。
何だか、その子は強烈的な印象があって。
整ったパーツなのに、化粧している訳でもなく、かと言って嫌味でも無く、目がぎらりと光っていて。
睨んでいるような。
そう考えていたら、小柄な彼女は俺に手を伸ばした。
冷たい指先が頬に触れて。
「あんた、わざとらしい笑い方するんだね」
ふわりと横を通り過ぎていく彼女。
すぐ近くの下駄箱に寄って行き、靴を出して去って行ってしまった。