カラス君と黒猫さん
「何でも無いよ。ただ、どうかなーって話。」
口角を上げて笑ってみせる黒猫さん。
そんな顔を見るのは、初めてだ。
引き攣った、作り笑い。
こんなにも心を虚しくさせるなんて知らなかった。
「、どうしたの?早く乗ろうよ」
停車した電車の前で立ち尽くしていると、黒猫さんが俺を引っ張る。
「・・・・・・・・・・・、」
袖を引っ張られて、電車に乗った。
昼間みたいに大きい笛の音はしなくて、扉は閉まる。
(黒猫さんは無意識だったのかな)
一瞬。
ほんの一瞬。
カメラのフラッシュ以下位の、一瞬。
黒猫さんがとんでもなく哀しそうな顔をしたんだ。
いつもの笑顔は嘘だったんじゃないか、って思うくらい。