カラス君と黒猫さん






「何で来たの・・・・・・・・・・?」

「ここに居ると思ったからだよ」

「勘?」

「そうだね」



やっと黒猫さんはいつもの顔で笑った。



「・・・・・・・雅から、電話が来たんだ。仕事に来ないって」

「・・・・・・・・・・・・あぁ、そうだった」

「昨日、黒猫さん妙な事言ったでしょ?何か・・・・嫌な予感がして」



腫れてしまった黒猫さんの目蓋を指でなぞる。
その指に、ひんやりとした手が触れた。



「・・・・・カラス君の手、温かい」

「黒猫さんの指、いつも冷たいね」

「冷え性だから」



触れた手が、震えてた。
小さく、何かを隠すように小刻みに震えていた。
その震えが、寒さなんかじゃない事は分かっている。




「・・・・・・・おしえて」




君の、本当の顔を。


君の、仮面を剥がして。



“嫌”って言うなら、無理にでも抉じ開けてやるから。



「“本当”を見せてよ」







< 171 / 223 >

この作品をシェア

pagetop