カラス君と黒猫さん
「何で来たの・・・・・・・・・・?」
「ここに居ると思ったからだよ」
「勘?」
「そうだね」
やっと黒猫さんはいつもの顔で笑った。
「・・・・・・・雅から、電話が来たんだ。仕事に来ないって」
「・・・・・・・・・・・・あぁ、そうだった」
「昨日、黒猫さん妙な事言ったでしょ?何か・・・・嫌な予感がして」
腫れてしまった黒猫さんの目蓋を指でなぞる。
その指に、ひんやりとした手が触れた。
「・・・・・カラス君の手、温かい」
「黒猫さんの指、いつも冷たいね」
「冷え性だから」
触れた手が、震えてた。
小さく、何かを隠すように小刻みに震えていた。
その震えが、寒さなんかじゃない事は分かっている。
「・・・・・・・おしえて」
君の、本当の顔を。
君の、仮面を剥がして。
“嫌”って言うなら、無理にでも抉じ開けてやるから。
「“本当”を見せてよ」