カラス君と黒猫さん
「あー。もう母さん居ないや」
「あ、ごめんね。貴重な時間を」
「ううん、いいよ別に。すぐまた戻ってくるよ、気まぐれな人だから。それに掃除させちゃったのも私だし」
伸びをしながら欠伸をする黒猫さん。
「床で寝たから体いたい」
「私も」
腕を伸ばしながら、黒猫さんは立ち上がった。
「カラス君、どっか行こう」
「は?」
急だった。
黒猫さんは思い付いた顔で、俺を見下ろした。
「今日、暇なんだ。バイト入れてない」
「・・・・・・え、まぁ。いいけど。」
「立って」
黒猫さんの手を借りて、立ち上がる。
「ん、行こう」
「今?!いきなりだね」
「ご飯食べに行こう」
満面の笑みで黒猫さんは俺に凭れ掛かる。
「初デート」
今まで一ミリも見せなかったような可愛らしい微笑みを浮かべて、上目使いで俺を見た。
これは、「NO」とは言える訳が無い。
流石、水商売もできる黒猫さん。敵わない。