カラス君と黒猫さん
黒猫さんを見付けたと同時に、少し面白い気持ちになって、それからあぁよかった、と思った。
(行きたい場所が決まった)
丁度少し待った所で、まだ人が少ない電車が来る。
黒猫さんが乗り込むのを確認して、その電車に俺も乗った。
・・・・・・ストーカー、じゃないはず。
そう思いながら、最近感じなくなった“わくわく”を胸に、一車両越しに乗っている黒猫さんを見遣った。
(もしあれが黒猫さんじゃなかったら俺恥ずかしい人だ)
それでもいいか、と内心深刻になっていない自分を自嘲しながら吊り輪に手を掛ける。
2駅位過ぎて、黒猫さんは電車から降りた。
俺も半分、にやつきながら降りて、ばれない様に背後を歩く。
今更だけど、黒猫さんて小さくて人混みに紛れると物凄く困る。見失ってしまう事も電車の中で何度かあった。
取り合えず、黒の無地パーカだけを頼りに、黒猫さんを尾行、じゃない、追い掛けた。