カラス君と黒猫さん
お兄さんと睨み合っていたら、突然腰に冷たくて細い腕が絡んできた。
「っ・・・・・・!、黒猫さん・・・・・・・・・、」
「もういいよ、カラス君」
頭を俺に擦り寄せて、黒猫さんは優しく笑った。
「兄さん、カラス君の事、着けてたでしょ」
「えっ?!」
「あぁ、そうだよ」
お兄さんはくつりと笑う。
「篠加羅君、覚えてないの?昨日の夜、君が落とした財布を拾ったのは俺だよ」
脳をフル回転させた。
夜・・・・・・・・・、財布・・・・・・。
背が高い・・・・・・・・・、
「・・・・・・・・・・・・・・・あぁ!」
「その時に顔を覚えて、尾行してたんだ」
綺麗に黒猫さんと似ている顔で笑うお兄さん。
(気付かない俺って・・・・・・。)
「気付かないカラス君って・・・」
「それ今俺も思った」
ひんやりとした腕が巻き付いたまま、黒猫さんは続けた。
「・・・・・・兄さんは嫌いじゃないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
痛いくらい冷たい風が、俺らの間を透き通る。