カラス君と黒猫さん



「いつだって私に優しかったし、何でも笑って見過ごしてくれた」



腕を通して黒猫さんの緊張が伝わってくる。



「・・・・・・・・私が本妻の子で、兄さんが前妻の子。母さんと暮らしても兄さんの居場所が無い事は知ってるんだ。」


お兄さんは相変わらず口を開こうとしなかった。



「せめて、私が居場所作ってあげようと思ってたんだ。ずっと窮屈そうだった。」



( まさか、)



黒猫さんはお兄さんに居場所を作ってあげる為に、“偽物”の自分を作ったの?



「私が一番兄さんに酷い事してるんだ。兄さんを可哀想だと思ったから、兄さんに抱かれても、犯されても何も言わなかった。同情だったんだ、ごめん」

「同情・・・・・・・・・?」



お兄さんは目を見開いて黒猫さんを見遣る。
俺もお兄さん同様、驚くことしかできなかった。




「でも、私はカラス君が居るからもう、そんな事できない」

「琴羽・・・・・・・・・・!!」

「ごめん、兄さん・・・・・・、いや当麻君、私、もうここには帰って来ない事にした」



ぎゅ、と俺の服の裾が引っ張られた。


(え、今なんて。)



「・・・・・・・・・・・・は、え・・・?黒猫さん?」

「カラス君もごめん。何も言ってなかった」



“ここにはもう帰って来ない”?




まさか、引っ越す、とか・・・・・・・・・?





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