カラス君と黒猫さん
壁に凭れて、黒猫さんを抱えながら俺は倉庫を見渡した。
壊れた楽器や、要らなさそうなプリントが沢山ある。
先生には掃除をしてる、とか言ってるけどこの汚さじゃ、ばれるかなぁ。
「カラス君がかっこよかったよ」
飲んでいた水を吹き出しそうになった。
「っ、くろねこさ・・・」
「うん。兄さんに威圧されてるのに、“黒猫さんは・・・「あああああああ!!やめて!」
何とか制して、雅には聞こえなかったはず。
「・・・・・・・・・・まぁ、今母さんも役所に行って色々やってくれてると思うから。これからカラス君とエンジョイするよ。雅も早く所帯持てるといいね」
ピ。
お約束の言葉と共に、電話は切られた。
「・・・・・・何言ってるの・・・・・・」
「だって、のろけたかった」
「と言うか、いつから見てたの」
「結構前から」
悪戯っ子のように笑う黒猫さん。
本当黒猫さんには敵わないや。
黒猫さんの顔が俺の耳元に近付いた。
「・・・・・・・・・・須王くん」
耳を疑った。
「・・・・もう一回言って」
「やだよ恥ずかしい」
「今名前、」
「カラス君もやってみてよ、恥ずかしい」
「・・・・・・・・・・・・・・」
初めてに近いほど久し振りに見た、黒猫さんが照れてる顔は新鮮だ。