カラス君と黒猫さん
「んー、やっぱ無理。今はカラス君でいいや」
「そうだね、黒猫さんの方がしっくり来る」
「うん」
腕が身体に回った。
その小さい背中に俺も腕を回して、抱き締める。
黒猫さんの頭に顎を乗せながら、ふとお兄さんの事を考えた。
「お兄さん、黒猫さんの事が好きだったと思うよ」
「・・・・知ってたよ。でも、事実上血が繋がってるから。本当酷い事したんだね、私」
複雑だ。
黒猫さんのお父さんの、亡くなった前妻との間の子供がお兄さんで、再婚したマユさんとの間の子供が黒猫さん。
腹違いのお兄さんが居辛さそうにしてたから、黒猫さんは出来る限り黒猫さんに出来る事をしてたんだ。
それが例え、皮肉な事でも。
お兄さんの“居場所”を作るのは黒猫さんしか出来なかったから、黒猫さんは何でも我慢してたんだ。
難しい話。
「・・・・兄さんはお母さんも、お父さんも居ない。血が繋がってるのは私だけなんだ」
なのに、勝手に兄さんを突き放した。
「・・・・・・・でも、お兄さんがどんなに辛い過去を背負ってても俺には関係ないし、黒猫さんを泣かせてるんだったら雅でも許さないよ」
「・・・・・・科白みたい」
「・・・・・・・・・・・本当だ」
黒猫さんは照れ臭そうに笑った。
(良かった、この笑顔がまた見れて)