カラス君と黒猫さん
■カラス君と黒猫さん
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俺の黒猫さんは現在、真上を見ながら歩いている。
“転ぶよ”と言ったら俺の腕を掴み始める黒猫さんには癒される他ない。
「カラス君、」
「ん」
「勿体無いよ」
「何が?」
朝8時。
丁度、学生やサラリーマンが会社や学校に行こうとしている時間。
人混みの横断歩道、上を向いて歩いている黒猫さんは異様だ。
「空、久し振りに晴れてる。けど、建物が邪魔してよく見えない」
「あぁ、今日の空綺麗だね」
俺も上を見上げる。
何も拒まない、水色の空。
雲が東の方に少しあるだけで、あとは真っ青。
「綺麗だね」
「うん」
二人して、真上を見ながら歩いている所は誰がどう見ても異質だ。
けど、黒猫さんと付き合ってからは、もうそんなことどうでもよくなってきた。