カラス君と黒猫さん
□翻弄
――午後七時。
秋に浸かったこの季節は、もう夜に等しい位真っ暗で。
「お疲れ様」
「・・・・・・・・・・・黒猫さん」
「着替えたの」
「うん。これ、ありがとう」
俺は、またあの物置部屋で、着ていた服を手渡した。
「どうだった?」
「疲れた・・・・・・・・・・よく、あんな仕事が出来るね」
「バイトだから」
俺と同じ様に、机に腰を掛ける。
並んで分かる彼女の小ささに少し、安心感が湧いた。
「でも良かったよ?女装のカラス君」
そう、俺は見事、初キャバクラデビューをした。
勿論がっつり商売をした訳でなく、あくまで少しだけど。
マンツーマンと言う場面に遭遇しなくて良かった、と思った。