カラス君と黒猫さん
「階段近くで、何か五月蝿い女子が居たの。それも大人数で。邪魔だったから、そのまま口にしたら喧嘩になって、落ちた」
「え、落ちたって・・・・・・・・」
「あぁ、それなりの運動神経はあるから、掠っただけ」
ね、鈍臭いでしょ?と苦笑する黒猫さん。
「・・・・・・・なんか、想像と全く一緒だよ」
「どういう意味なの」
「喧嘩っ早そうだから」
「そう?」
がちゃ、と後ろで音がした。
振り返ってみると、がらの悪い男が一人。
「おぅ、お疲れー」
「お疲れ」
雅に黒猫さんが軽く会釈する。
「いやー凄い評判だったよな。本当。“幻のキャバ嬢”なんて呼ばれちゃってさぁ」
「そんな呼ばれ方してたの、俺」
「店で働か・・・・・・・」
「働かないよ。」
「残念だ。
あぁ、そうそう黒猫、今日のカクテル、もっと甘みがあってもいいと思うぜ」
「ちょっと材料足りなくて、急いでつくったのがアレだったから。次はそうする」
どうやら俺が働いている間に、黒猫さんは裏方で食べ物を出す料理班に居たようだ。
バイトは全て休んだ、とか言っといて結局働いてる黒猫さんて。