カラス君と黒猫さん
どこかの部屋に運んでいたのか、黒猫さんの脇にトレイが挟まれている。
「偶然だね。今日はどうしたの?」
「こっちの台詞だよ!黒猫さんこそ、何でここに・・・」
「今日は、一日限りのカラオケのバイトでーす」
(この人は本っ当によくバイトしてるな・・・)
「そうなんだ。俺は、こないだの運動会の打ち上げ。先生も居るけど・・・・・・大丈夫?働いてる所バレたら・・・・停学だよね」
「先生も居るの?!それはマズい。多分大丈夫だと思うけど、部屋は何番?」
「んーと、2階の35番。」
「分かった。その部屋近くには絶対行かない。で、打ち上げと言う事はクラスの人全員居るの?」
「そうだね。頑張って」
がくり、と黒猫さんから力が抜けていくのが分かった。
「もういいや。諦めた。停学でも何でも食らってやんよ」
「何だそれ」
「カラス君もフォローよろしくね。それじゃ私仕事に戻るよ」
からりと表情を変えると、黒猫さんはあっという間にフロントの中に消えてしまった。
俺は、ジュース片手に部屋に戻ることにした。