カラス君と黒猫さん





数分後、昼休みの賑やかさに紛れて教室に潜り込み、自分のサブバッグを肩に掛け、俺はそろりと教室を後にした。




良かった。皆自分達の時間に入っていてくれて俺が帰る事に何も言わない。


あの友人が居ないのを確認して、階段を駆け下り、下駄箱で靴を履き替える。





俺の、日常。



昼飯を音楽倉庫で食って、午後気が向いたら授業に出て、そうでなかったら帰る。



成績はがた落ちだけど、気が向かない授業を受けても頭に入ってこないし、別に支障はないと思う。


先生も、友達も誰も止めない。
熱心な先生は少し注意するけど。

そう言う生徒も少なくはないし、とやかく口にするのも面倒臭いだろうし。







校門を出て、ポケットに入っている音楽プレイヤーのイヤホンを耳につけた。





外の匂いが鼻をつく。


花の匂い、木の匂いが混ざって運ばれた風が頬を撫で、髪を揺らす。
少し肌寒くなったこの季節に金木犀の甘い香りが丁度良い。




耳から直接頭に響く音楽は少し雑音だけど、車の音や話し声をシャットダウンして俺の世界に入るにはピッタリだ。




信号待ちに足でリズムをとる。

目の前を車が通り過ぎて行き、微弱な風に揺られて信号が変わった。




< 7 / 223 >

この作品をシェア

pagetop