カラス君と黒猫さん
音楽を聴いて、歩調を緩め、周りの景色を堪能しながら想像に耽る。
誰にも邪魔されない、俺だけの時間。
広い横断歩道を渡ると、沢山の人とすれ違う。
少し横目で俺を見る人、真っ直ぐ前を向いて歩く人、俯きながら考えに浸る人、喋りながら歩く人。
それぞれがそれぞれに各々の事をしている。
分かり難いけど。
信号が点滅しているのを見ながら、横断歩道を渡り切った所で、人気の無い路地に入る。
そこでひとつ、溜め息をついた。
俺にとって、この世の中はつまらなさ過ぎるなぁ。
いや、俺がつまらなさ過ぎるのかもしれない。
高いビルとビルに挟まれたまま、空を見上げた。
昼の真っ青な空がこちらを見下ろしている。
何かたのしいことはないかな。