カラス君と黒猫さん
□狡猾
□ □ □
がちゃり。
簡素な音を立ててそれは開いた。
鍵を閉まって玄関の近くに置き、室内に入り、開けた扉を閉める。
靴を脱いで制服のネクタイを緩めた。
ただいま、と言おうとも返事は返って来ないのでやめた。
鞄をソファに置き、取り合えず寝転がってみる。
鞄を置いた拍子に転がり落ちてきた携帯を拾い上げ、今日初めての画面を見た。
時間は正確に“14時3分”をさしている。
そこで気付いた。
「あ」
数え切れないほど受信された、あの友人と知らない人からの嘆きのメールと着信の中に紛れた“父さん”の文字。
着信が結構前にあったようだ。
体を起こして、その番号に指を滑らせ、電話を掛けて見る。