カラス君と黒猫さん
「っ、」
「・・・・・・・・っ」
視界には、目を瞑った黒猫さんの顔。
俺の手は、黒猫さんの顔の真横についてある訳で。
近距離。
「・・・・・急になに・・・・・、」
引っ張られてバランスを崩した俺も悪いけど。
引っ張った理由はなんだった?と聞こうとしたとき。
「黒猫さん?」
「私、父親居ない。私が小学生くらいの時に、アルコール中毒で死んだの」
え、いきなりこんな体勢で、その話?
「肥田に、その事、馬鹿にされたの」
真下にある黒猫さんの顔が曇る。
本当はこの体勢を戻したくて手を引こうと思ったけれど、その表情に手が止まって。
「『父親が居なくて金が無いんなら、俺がもっとお金あげようか?』って。」
そうやって、クラスメイトもあの先生に犯されたんだ。
黒猫さんは苦痛そうな、けれど物凄く綺麗な顔で言い放った。
「悔しいんだ、抵抗できなかった私が」
およそ熱のせいでうわ言を言っているんじゃない、と分かった。