カラス君と黒猫さん
「黒猫さんみたいな人が増えればいいのにね」
「どういう意味?」
「セクハラされて、ぶん殴れる度胸と根性があったら犯罪なんて起きないだろうし、手を出してぼこぼこにされる位だったら、男の方もしないと思う。
ここで、卑屈にならない根性があればまだもっと、世界は上手く行ってたかもね。」
拍子抜けた顔をする黒猫さん。
「・・・・・・・そんなこと言われたの初めてだ。喧嘩っ早い性格をこんなに美化してくれるカラス君を尊敬するよ。」
「喧嘩っ早いのも、今の俺らには必要でしょ?」
「・・・・・・・どうだろう」
黒猫さんは、細い髪を指に巻きつけながら、苦笑して答えた。
「俺は黒猫さんのそう言う性格好きだよ」
「私はカラス君の客観的なところ嫌いだ」
俺のダメージ強くね?
と思ったのは心にしまっておいて。
黒猫さんは、人とちょっと違う。
何と言うか、流されないと言うか、自分を持っていると言うか。
それは“変わっている”と言う事かもしれないけど、今の時代には“変わっている”人が少ないんだ。
甘美な言葉に惑わされない。
ブレない、しっかりした人だと思う。