問題山積み
その想いが募り募って、私が星羅に会いに行ったのは、星羅に出会ってから1週間後のこと。
私は初めて、残業を断って店に来た。
そこからはもう、なし崩し。
自分の給料の大半を、星羅との逢瀬に費やしている。
それが無駄だとか、そんなことは今でも一切思わない。
私は幸福を買っているんだ。
例えば、プラダのバッグを買って得られる幸福感…それと何ら変わらない。
当然、節度は守る。
借金はしないし、翌日が仕事ならば朝帰りだってしない。


「私みたいな細い客、面倒じゃない?」


話の最中にもどんどんお肉を食べていく星羅に、ふと意地悪を言ってみた。
星羅の手がぴたりと止まる。
そして、大きく見開いた目で私に言った。


「結衣、何言ってんの。毎日のように俺に会いにきてくれるのに何が面倒なの。大好きな結衣がいるから、俺、楽しく仕事できるんだよ?」


星羅の澄んだ目。
それが嘘なのか真実には、もう私には見抜けない。
すっかり盲目になってしまったんだ。
もし仮に嘘であっても、星羅の甘いそれなら、残さず飲み下したいと願う。
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