問題山積み
ぎらぎらしている街の中で小さな店構えのそこだけが、妙に優しく見えた。
動物は好き。実家でも、犬を1匹飼っている。
私が中学生の時、お年玉を全額遣って買った柴犬だ。
その時から私には貯金する習慣というものが微塵もなく、放任主義の両親もそれを咎めなかった。
お金がないのは怖い。
それは貯金がどうとかいう話ではなく、お金が遣えないのが怖いから。
私は私の為に生きている。
私を飾りたいから、私はいろんな物が欲しいし、買う。
ふと、ペットショップの入口にいたアメリカンショートヘアと、ガラスケース越しに目が合った。
片手にすっぽり収まりそうな小さなその子は、怠そうにガラスケースの隅で丸まっている。
その子に引き付けられ、私はふらふらとペットショップの中に入った。


「いらっしゃいませえ」


見るからにやる気のない20歳そこそこの女の子の店員。
肩まで伸ばした傷んだ金髪の根本が黒くて、耳はピアスだらけ。
その店員に構わず(尤も、あちらも私に構う様子がない)、私は狭い店内を見渡す。
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