問題山積み
タイマーが鳴っても、まだお客さんが「出して」いなければ、さりげなくタイマーを止めて、多少のサービス残業。
なるべくなら延長はこちらから薦めない。
お客さんが萎えないように。これが肝心。
ほぼ毎日朝から晩まで出勤しているレギュラーの癖に、私は売れっ子でも何でもないし、リピーターのお客さんだって多くない。
それでも評判が悪くないのは、愛想とサービス精神のお陰かな。
少しでも永く、この仕事をしていたいから。
この仕事をできる時間なんて限られている。
私は身体と一緒に若さを売っているんだ。
健全な仕事は、高校を出て半年で手放した。
事務の仕事だった。
給料は良くはなかったし、それに、ちっとも面白くなかった。
だから「辞めよう」とふと思ってからは、とても早かった。
退職して、街をふらついていた時に声をかけてきたスカウトのお兄さんについていって、体験入店したら、思いの外楽しかったんだ。
高校を出てすぐ一人暮らしをしていたし、親は放任主義だから詮索とかもないし、彼氏とも別れたばかりだったから、気にすることは何一つとしてない。
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