問題山積み
背後からかけられた先輩の声に、私は心底うんざりした。
「残れる?」じゃなくて、「残れ」の間違いでしょうが。
だけど今の私はそんな先輩の言葉に屈しない。
先輩の申し訳なさそうな顔を踏みにじるように、私は笑顔で、


「すみません、約束があるので」


きっぱりと、そう言い放った。
先輩の顔が曇る。
言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばいいのに。
…ほんの3ヶ月くらい前の私も、そんな感じだったっけ。
誰にも見えないような小さな自嘲を零して、私は帰り支度を始めた。
短い人生、仕事に押し潰されて生きるなんて真っ平御免だよ。
何のためにある定時?残業で得られる微々たる収入なんて欲しくない。
チームワーク?何だそれ。
誰が私の将来を保証してくれるの。












更衣室で手早く化粧を直し、星羅が待つ焼肉屋に向かう。
星羅は既に個室に通されていて、私の顔を見るなり、「お疲れ、結衣!」と明るく声をかけてくれた。
その一言で、疲れなんてすっかり癒える。


「ごめんね、待たせて」

「ううん、今来たとこ」
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