問題山積み
その1時間で、うまくいけばもう1本指名が入るかもしれないから。
でも、今日は4本仕事したからおしまいにしよう。
また明日もある。


「はい、精算お願いします」

『分かりましたー』


電話を切ると、私は待機室の片付けを始めた。
たかだか風俗。されど風俗。
自分が気持ち良く働く為には、他の子も気持ち良く働く必要がある。
だから、私は散らかして出掛けない。
こういう考えもまた、私がこの仕事を辞められない理由のひとつなのかも。
受付に行くと、店長が既に今日の私の日給を用意していた。
本日の稼ぎ、4万6千円なり。


「今日も1日お疲れ様。明日も宜しくね」

「有難うございます」


店長は人がいい。いつも穏やかだ。
こういうところで働く人だから、まあ、裏の顔も当然あると思うけど。


「エリカちゃん、人気出てきたよー。本指名のお客さんも増えたしね!」

「頑張ります」


私は当たり障りのない返事をし、会釈をして外に出た。
びゅう、と木枯らしが吹いて、反射的に私はマフラーに顔を埋める。
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