とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
【プロローグ】
小鳥の囀り…木々のざわめき…風の囁き…
辺りにはそれらしか聞こえない。
彼はゆっくりと森の中を移動し、ファインダーを覗いた。
自分の目で見た景色と違い、ファインダーを通した景色はまるで絵画のようだった。
その美しさに暫し心を奪われる。
彼は夢中でシャッターを切った。
こうやって独りで趣味に没頭する時間なんて最近なかった。
久しぶりに有意義な休日が過ごせたような気がする。
そう思いながら近くの切り株に腰を降ろし、ボトルの蓋を開けてミネラルウォーターを一口飲んだ。
そしてまた美しい景色を眺めていた時…
突然鳥達が何かに驚いたように一斉にバサバサと飛び立った。
彼は驚いて立ち上がると辺りを見回す。
─シュンッ…!
何かが空を切る。
─シュンッ…!
また…。
目には見えない何かが確かに彼の周りに居た。
彼はカメラを構え…
─シュンッ…!
それに向かってシャッターを切った…。
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