とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
右京は忍を庇うように胸に抱き抱える。
そして彼のグリーンアイを一瞬閉じ…再び瞼を開き、その真紅の瞳で辺りを睨んだ。
……居た。
辺りを縦横無尽に飛び交う無数の発光体が見えた。
右京ですら力を解放しないと見えないのなら、おそらく普通の人間には見えない。
「忍。目を瞑ってろよ…!」
コクコクと彼女が頷いたのを確認すると、右京は纏っていた風を更に強める。
その風が右京の瞳が煌めいた刹那、無数のウトゥックに向かって放たれた。
「………」
忍は辺りが静かになると、ゆっくりと目を開けた。
右京は暗い闇を真紅の瞳でただ睨んでいる。
そして、右京の小さな呟きが聞こえた。
「…なんでアイツが…?」
「…右京…?」
忍が右京に声を掛けると、我に返ったようにハッとしてこちらを見下ろす。
その目は…いつもの優しいグリーンと赤のオッドアイで…。
切れ長の瞳を細め「もう大丈夫だよ」と微笑む右京に、忍もホッとして笑みを返したのだった。