とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
バジリスクは右京がシャワーを浴びている間、先日彼が日本から持って来た緑茶を入れた。
右京の様子が少しおかしいように思える。
濃い目に入れた緑茶をグラスの中の氷に注ぎながら、それをぼんやりとマドラーで混ぜた。
…マスターのあんなに疲れた表情、今までに見たことあっただろうか…?
─バージ…。
頭の中に突如聞こえた声にハッと我に返りると、彼女は何もない壁に目を向ける。
次の瞬間そこに出現した魔方陣にバジリスクは深々と頭を下げた。
部屋の中に風が吹き、そこから現れた彼はフワリとバジリスクの前に舞い降りた。
『…お待ちしてました…ハニエル様。』
ブラウンの髪を揺らし、純白の翼を仕舞うと彼はバジリスクにニッコリと微笑んだ。
『“ハニエル”じゃなくて今は“虎太郎”だよ、バージ。』
『そうでしたね。…マスターは今バスルームです。』
虎太郎は『そうなんだ』と呟くと、ツカツカと部屋を移動してバスルームの扉を開けた。