とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
ニックは顎髭を擦りながら写真をジッ見つめ、ややあってから口を開いた。
『なぁ…。“スカイフィッシュ”って知ってるか?』
『ああ、高速で飛ぶ虫だろ?…ハエだかトンボだか…』
『この写真、その類いじゃないか?』
あまりにも真顔でニックが話すから、右京はプッと吹き出した。
『あんなの都市伝説だろ~?』
『お前が言うな、お前が!』
確かに右京の存在そのものが都市伝説みたいなものか…。
それからニックお得意の“ウンチク”が始まり、右京は早々にストップを掛ける。
『その話…長いか?』
『なんだよ、その言い方は!…シノブといい、クロウといい…もういい!』
ニックはムッとしてバジリスクの居るキッチンへと行ってしまった。
どうやら彼の担当である忍と一悶着あったらしい。
まぁ、それもいつもの事だ。
右京は気にもせず、今のうちにと論文の続きに取り掛かるのだった。