とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そして彼は眼鏡を指で押し上げ、ゆったりと椅子に背中を預けた。
『…こっちとしてもクロウをそう易々と渡すわけにはいかない。』
『アラン…』
きっぱりと言い切るアランに右京は胸が熱くなった。
『だが、クロウの立場も尊重しないとな。』
右京はアラン達に見つめられ、答えに詰まる。
『…俺は…元々神の使いだった。神々の命は絶対で、俺に拒否権はない。』
そう…拒否をしようなど、考えた事もない。
『…それは前までの話だろ?今は?』
『確かに虎太郎の言う通り、前までの俺なら間違いなく神に従ってた。…今は判らない…しかもまだマスティマが行動を起こして来ないし…』
アランはチラッとダンと目を合わせ、小さく笑みを浮かべた。
『判った。では我々が先に仕掛けてみるか…』
そう言ってアランはデスクに両肘を付くと口元の辺りで手を組んだ。