とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
ニックは原稿を仕上げたばかりだったし、思わず“嫌だ”と言いそうになった。
が、そこはアランの方が上手だ。
ニックが言葉を発するより先にアランが声色を強める。
『バチカンからの要請だ。』
ニックは彼のその言葉に『うっ…』と怯んでしまった。
クスッと微かな笑い声をした方を睨むと、クリスが愛銃を磨きながら肩を揺らせていた。
『…クリスに頼めばいいじゃないか!』
『クリスには他に頼みたい事がある。』
『なら一緒に…』
『ニックに“討伐依頼”はこなせない。』
『うっ…』
『いや…囮でもいいなら一緒に連れてってやるよ?』
ニヤニヤと笑うクリスにニックは悔しくて呻きを漏らす。
そして遂に観念したように肩を落としたのだった。