とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
再び『はぁ…』と深い溜め息を着く。
『…囮役の方が良かったかもしれない…』
そう独り言をぼやいた時、携帯のメールを知らせる音に気付き、ゴソゴソとポケットをまさぐる。
…あぁ、詳細は追って知らせるって言ってたな…
ニックはメールの内容に目を走らせ、自分でも血の気が引いて行くのが判った。
─ポーン…“Attention, please …”
機内の放送が耳に入り窓の外に目をやる。
空港の滑走路の自分を乗せた旅客機が動き出している。
どうやら天候が回復したらしい。
『…やだ…!やっぱり降りる…!』
『おっ…お客様!?もう離陸致しますのでシートベルトを…!』
『やだやだ!!俺は行きたくない…!!行きたくないんだって~!!』
ニックの悲痛な叫びは周りの乗客にただ迷惑を掛けただけで、旅客機は優雅に大空へと舞い上がるのだった。