とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
彼は何を心配しているのだろう。
『またニックが手を出すとか思ってんのかな…?』
忍は口元に指を当てながらなんてメールを打とうか考えた。
─“心配しなくても大丈夫だよ?次またあんな事があったら、私がアイツを殴るから(笑)”
それから暫くしてげっそりとしたニックが現れた。
『…やぁ、シノブ…急にすまなかったね…』
『私なら大丈夫ですけど…大丈夫ですか?』
どうみても大丈夫でないニックに忍はそう声を掛けた。
彼は溜め息着いて力無く頷いた。
…駄目ね…ここは私がしっかりしないと!
これでもジャーナリストだ!と忍はこっそりと気合いを入れる。
『さぁさぁ!私もサポートしますから、元気出して行きましょう!』
『えー…元気なんて出るわけないじゃないか…』
ブツブツ何かを言っているニックを無視して忍は彼の背を押した。
…だから気付かなかった…右京からのメールが来ていた事に。
─“その死海文書の件、裏がある。俺も合流するから無茶しないように…”
そのメールに忍が気付いたのはかなり後になってからだった。