とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『はっきり言って…私、あまり期待してませんでした!』
『確かに…。イスラエルは貧困の差が激しいからね。』
忍は自分の考えが偏見だったと反省し、ニックに促され館内を歩く。
『死海文書の現物は恐らくそう簡単には見せて貰えないだろうけど…』
そう言いながら、どんどん奥へと進んで行く。
『けど、写本にして保管されてるんだよ。』
ニックは館内の一画にある棚の前で立ち止まり、大きな表紙の分厚い本を取り出す。
『さて…気が進まないけど、ここから始めるよ。死海文書、約800巻の“穴”探しだ。』
『…はっ…800…!?』
忍は自分の認識の甘さを叱咤したくなった。
…死海文書ってそんなにあるの!?
それから数時間の間、忍とニックは図書館から一歩も外に出ることは無かった。
そして、忍とは裏腹にニックは何とか時間稼ぎが出来た事にホッと胸を撫で下ろすのだった。