とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
右京は右手にしていた革のグローブを外すとその手の平を眺め、格子の一本を握り締めた。
徐々に帯びた右手の熱は、握った格子にまで伝導する。
数秒でスチール製の格子は真っ赤になって焼き切れた。
…非常事態だから仕方ない…うん…。
自分にそう言い聞かせ、上部が焼き切れた格子を思いっきり向こう側へひん曲げた。
その隙間から身を滑り込ませ、方角を確認しながら考古学庁へと歩き出した。
数十分進んだ辺りで右京は天井を見回す。
『…ここかな…?』
梯子に足を掛けてタンタンと上ると、真上の蓋を押し上げた。
その隙間から見えたのは暗い路地。
奥の方に数台の車が見える。
…って事はここは駐車場のある北側か…。
排水路に戻って設計図を再確認する。
…もう一つ先に回れば建物裏手の廃棄物集積所か?
数十メートル進んで先ほどと同様に真上の蓋を押し上げた。