とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そんな忍の隣でニックが口を開く。
『…死海文書は約800巻の写本の集まりだと言われる。内容は旧約聖書やそれに関連した書物の断片で、実際は7つの巻物らしい。』
『…7つ…本当に7つだったのでしょうか?』
忍の問いかけにニックは首を傾げる。
そんな彼に構わず忍がある仮説を立てた。
『たとえば…もし、7つじゃなく、もっとあったら…?』
『…というと?』
『もし、新たに死海文書が発見され、その解読に成功してたら…?その内容が、世紀の大発見で重要機密なら…マイヤーが消されてもおかしくない。』
ニックは素直に忍の仮説を面白いと思った。
『…だって腑に落ちないんですよ…7つっていうのも中途半端ですし…。誰が隠したのかも判らないのであれば、正確には幾つあったのかも判らないじゃないですか。』
ニックは『確かに…』と呟きながら顎髭を撫でた。