とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『愚痴ってのは不満があるから出るんだ。…原因はその不満じゃないか?』
『不満…か…。』
確かにリサが何かを不満に思っているのは虎太郎も気付いていた。
ずっとそれは自分に対する不満かと思っていたが…。
…もしかして、俺に対する不満じゃないのか…?
『そうか…なんとなく判ったかも。』
『そりゃ良かった。』
再び目を閉じたニックが口元に笑みを浮かべる。
『…ニックはずっと女居ないの…?』
『…喧嘩売ってんのか?』
『いや、単純にそう思っただけ。』
少しの沈黙の後、ニックはポツリと呟いた。
その言葉が上手く聞き取れず、虎太郎は『えっ?』と聞き返す。
『だから!!…シノブにちょっと手出した。』
『ええええっ!?マズイよ、それはぁ~!!』
思わず声が大きくなり、回りの乗客に睨まれて慌てて身を潜めた。