とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



救いなのは右京がそれらに全く興味がない事だ。



彼が考えているのは人間界の平安だろう。



虎太郎は誰に流される事なく自分の意志を貫く右京が好きだった。



自分にはそこまで出来る自信はないから…。



ぼーっと窓の外を眺めていた虎太郎の耳に機内のアナウンスが聞こえて我に返る。



どれくらい考え込んでいたのだろうか?



隣のニックは軽くイビキをかいて寝ていた。



『…ニック。もうすぐ着くみたいだよ。』



身体を揺すられニックが眠たそうな目を開けた。



着陸体勢に入った飛行機が風に煽られたように一瞬大きく揺れた。



『…なんだ、風が強いな…』



それがこれから起こる事の暗示にも思え、虎太郎は微かに不安を感じた。




< 195 / 476 >

この作品をシェア

pagetop