とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『あの、お隣の事でお訊きしたい事がありまして…』
そう話を切り出したニックに家主である老婦人は『あんた、警察かい?』と鋭い視線を向けた。
『いえいえ…警察じゃなくて雑誌記者です。』
『記者…?そうかい、てっきりあの日の事を再捜査でもしに来たのかと思ったよ。』
老婦人の言葉に二人は顔を見合わせた。
『…すみません、“あの日”って?』
『なんだい、知らないのかい?隣のじいさんは殺されたんだよ!』
『こ、殺された!?』
思わず声がでかくなり、ニックは慌てて回りを見渡す。
人影がない事に胸を撫で下ろし、再び老婦人に目を向けた。
『その話…詳しく聞かせてもらえますか?』
老婦人は少し声を潜めながら得意気に“あの日”の事を話し始めた。