とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
それは数ヵ月程前の事だった。
考古学者の息子だった人物はノーマンという名で、老婦人とは以前から飲み友達だった。
彼は普段は無口で陰気だったが、お酒が入ると陽気になりよく喋る男だったと彼女は言う。
『あの日もいつもみたいに、夜うちで飲んでたのさ。』
ほろ酔い加減で9時過ぎにノーマンを見送ったのが生きた彼を見た最期だった。
『…何故殺されたと…?警察がそう言ってたんですか?』
『警察は急性アルコール中毒だったって言ってたさ!…でもノーマンはいつも何かに怯えてたみたいだしね。』
ノーマンは中毒を起こす程飲んで無かったし、お酒も強い方だ。
老婦人は警察に『そんな筈ない、ちゃんと捜査してくれ』と頼んだらしいが、警察はまともに聞いてくれ無かった。
『…だから私はノーマンが誰かに殺されたんだとにらんでんだよ。』
彼女は自信ありげにそう語った。