とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




日中は慌ただしく人々が行き交っていた通りも、深夜にはたまにタクシーが通るくらいで人影はほとんど無かった。



そんな寂しい通りを右京は歩く。



イギリスで生活するようになって早3年。



最初は苦労して覚えた道順だったが、今では勝手に足が向く。



一階のアンティークショップの前に人影が見え、右京は『よぉ』と声を掛けた。



『どっか行くのか?』



『“仕事”だ。』



アンティークショップの店主であるクリスはいつもの無表情でそう言った。




彼の言う“仕事”が店絡みのそれでないことは明らかだった。



・・・“あっち”の仕事か・・・



軽く手を上げて夜の街に消えていくクリスを見送って、右京は二階へ続くビルの階段を小走りで上がる。



入口でチラリと監視カメラを見上げると、何重ものロックが外れる音が聞こえた。



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