とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~

────…

──…



…あれ…?



老婦人が目を覚ました時、辺りは薄暗かった。



酷く喉の乾きを感じ、重たい腰を上げてキッチンに移動すると冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。



ゆっくりした動作でグラスにそれを注ぎ、グビグビと飲み干す。



『…私は何をしていたんだっけねぇ…』



歳を取ると物忘れが激しくて困る。



ふとミネラルウォーターの青いボトルを見て何かを思い出し掛けた。



『青……青い…なんだったか…』



思い出せない。



部屋の灯りを付け、一人掛けソファに腰を下ろすとテレビを付けた。



『…テレビ…見ながらうたた寝をしてたような…』



だがテレビのスイッチは今自分が付けたから間違いなく消えていた。



彼女は首を傾げてから一人小さく笑う。



『…歳を取ると物忘れが激しいからやだねぇ…』



今度はそう声に出して独り言を呟いた。




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