とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『…何か怪しいぞ…本部に連絡入れて来てくれ。』
ニックにそう耳打ちされ、虎太郎は頷くと外に出て行った。
その様子を見ていた不動産屋の男は自分が何か失言をしたのかとオロオロし出した。
『ここを片付けたのは亡くなった方の親族ですか?』
『ええ、娘さんが…私どもは電話で依頼されただけで実際は会ってませんけど…』
…これだけの資産がありながら電話だけ?
聞けば聞くほど真実味に欠ける話に思えた。
顎髭を撫でて考え込むニックを見て不動産屋の男は『あの…』とおずおずと声を発した。
『実は私、この後もう一件仕事がありまして…まだご覧になります?』
『出来たらもう少し…』
『では、鍵は開けたままにしておきますのでご自由にご覧になって下さい。鍵は私が掛けに戻りますので…』
そう言い残すと彼は足早に去って行った。