とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
ポートマンは目頭を揉みほぐすと『私はね…』と呟くように口を開いた。
『亡くなった男性に申し訳なくて仕方ないのだよ…死者の声を聞くのが私の仕事なのに…』
…死者の声を聞く仕事…
医大時代からポートマンの口癖だった。
幼い頃、自宅に押し入った強盗に母親を殺された過去を持つ彼は、検死官になるのが夢だった。
だが、いざ念願の検死官になっても思うようにいかない時がある。
今回のそれもその一つで、事実を隠そうとする荒んだ裏社会にうんざりだった。
『…このメモは男性の体内から発見したんだ。彼は自分が殺される事を予期してたんだと思う。』
そして、司法解剖される事も予期していた。
『つまりこのメモが遺書…いや、ダイイングメッセージだと?』
ベッカーは彼がこれからしようとしている事を考えると不安になってきた。