とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
…これは…偶然か…?
上手く動揺を隠せたかは判らないが、ダンは出来るだけ平静を装ってベッカーの話に耳を傾ける。
『良心の呵責というか、使命感というか…彼はとても後悔してました。“被害者の男性に申し訳ない”と…。』
そこで一旦句切ると、ベッカーは顔を上げた。
『私は止めたのですが、彼は…彼はその事件について調べてたんですよ…!』
『…つまり…ドクターの友人は“消された”のかもしれない…と?』
『…そうでない事を祈ってるんですが…』
ダンは思いがけない話に頭の中で状況を整理する。
…死海文書に関わった人間が既に2人消された。
彼の話が真実なら、3人目の被害者が出た事になる。
しかも検死官に調書を捏造させたのは上…つまり警察上層部の指示…。
黙りこくるダンを見てベッカーは『すみません』と申し訳なさそうに苦笑した。