とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




外はもう陽が西に傾き、忍はハッとして壁の時計に視線を移した。



いつの間にこんなに時間が経ったのだろう。



もう退社時間はとっくに過ぎていたが、オフィスにはまだ残業組みが数名仕事をしていた。



忍は「残業しない予定だったのに」と独り言を呟くと、急いでデスクの上を片付け始めた。



向かいから顔をひょっこり出した谷地はそれを見て苦笑する。




「だからさっき言ったじゃない。“もうすぐ定時だよ”って!」



「えっ!?本当に!?・・・聞いてなかった・・・」




ついつい仕事に没頭してしまうとあまり人の言葉が入ってこない。



自分の悪い癖だと忍は自己嫌悪した。



「すみませんが、お先に失礼しま~す!」



パーティションにぶつかりながらオフィスを出て行く忍に谷地は「まったく」っと言って笑った。




< 22 / 476 >

この作品をシェア

pagetop