とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『…悩ませるつもりは無かったんです。この話、聞かなかった事にして下さい。』
『えっ!?…でも…!』
『もし刑事さんにまで被害が及んだら、私は自分を恨みますよ。』
力なく笑うと彼は立ち上がった。
『いつまでも滅入っていては仕事が出来ませんので、考えないようにします…』
そんな事出来るわけないだろうが、敢えてそう口にする事で自分を取り戻しているように見える。
『では…』と手を上げて去ろうとしたベッカーは思い出したようにダンを振り返った。
『そうだ!知ってたら教えて下さい。…“神に仕える悪魔”ってなんでしょうね…』
『さ、さぁ…私には…すみません、何の力にもなれず…』
『いえ、話せただけで幾分気持ちが楽になりました。…ではまた。』
ベッカーの後ろ姿を見送ってダンは思った。
…“神に仕える悪魔”?そんなのあの悪魔しかいないじゃないか…!
─“マスティマ”─
その名が脳裏を掠め、彼はブルッと身震いをした。