とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



『…悩ませるつもりは無かったんです。この話、聞かなかった事にして下さい。』



『えっ!?…でも…!』



『もし刑事さんにまで被害が及んだら、私は自分を恨みますよ。』



力なく笑うと彼は立ち上がった。



『いつまでも滅入っていては仕事が出来ませんので、考えないようにします…』



そんな事出来るわけないだろうが、敢えてそう口にする事で自分を取り戻しているように見える。



『では…』と手を上げて去ろうとしたベッカーは思い出したようにダンを振り返った。



『そうだ!知ってたら教えて下さい。…“神に仕える悪魔”ってなんでしょうね…』



『さ、さぁ…私には…すみません、何の力にもなれず…』



『いえ、話せただけで幾分気持ちが楽になりました。…ではまた。』



ベッカーの後ろ姿を見送ってダンは思った。



…“神に仕える悪魔”?そんなのあの悪魔しかいないじゃないか…!



─“マスティマ”─



その名が脳裏を掠め、彼はブルッと身震いをした。




< 220 / 476 >

この作品をシェア

pagetop