とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~


その木刀の先がTシャツの襟をグイッと引き下げた。



「…この鬱血はなんじゃ?」



…鬱血?…って…まさか!



すぐに彼女が付けただろうキスマークだと判ったがシラを切るしかない。



まるで子供のように「知らない、判らない」を繰り返す右京に師範がキレた。



「貴様っ!ワシが気付かんとでも思っとるのかぁっ!?」



「まままま、待て!話せば判る!」



「判るかぁ~っ!!」



怒り狂って木刀を振りかざす師範に今の右京が敵うはずもない。



結局コテンパにされ、午前中の稽古の時に子供達に散々心配された。



「男には黙ってやられなきゃいけない時もあるんだよ…」



「…よくわかんないけど、右京先生も苦労してんだね…」



右京は小さな手でヨシヨシと撫でられ、子供達の憐れみの眼差しが痛かった。



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