とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
彼がイギリスに居る間はメールのやり取りもこんなにスムーズにはいかなかった。
それなりに時差があるから仕方ないのだが、そんな時「ああ、右京との距離は遠いんだ」と思い知って少し寂しくなる。
だからリアルタイムでメールで会話が出来るという些細な事にも感激してしまうのだ。
窓から流れるいつもの町並みを眺める。
最寄り駅までの距離が今日は少し長く感じた。
電車を飛び降り階段を走って上がると、忍は改札を抜け足早に家路を急ぐ。
駅前のロータリーを通り過ぎた時、「そこの彼女~」と声を掛けられた。
一人で歩いていると時々ナンパされる。
“・・・急いでるのに!!”
忍はあからさまに不機嫌なムッとした顔でその男を振り返った。
「私、急いでるから他当たってくれない!?」
早口でそう捲くし立てると彼はプッと吹き出した。