とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




右京が風呂から戻った時、忍はもう居間にはいなかった。



叔母は右京を引き留め、「あの子…大丈夫かしら…」と神妙な表情をした。



「大丈夫。忍はおかしくない。」



キッパリと言い放った右京に叔母は無理に笑顔を作って見せた。



「右京…忍をよろしくね?…あの子、ほっとくと無理するから…」



「ん…判ってるよ。」



右京は叔母の肩をポンと叩いて階段を上がって行った。



忍の部屋をノックすると何故か潤が現れた。



怪訝な顔をした右京に彼は肩をすくめると「ちょっと…」と廊下に右京を引っ張った。



「右京さま…忍さまは誰かに呪いでもかけられてるんでしょうか?」



「お前から見てそう見えるのか?」



「ええ、まぁ…ただ妙なんですよ…」



「妙…?何が?」



「全く邪気が感じられないんです。」



呪いの類いなら少なからず邪気は生じるはずなのだ。



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